2026.06.16
EDRを入れているから安心は間違い?多層防御で考えるセキュリティ対策
近年、ランサムウェア対策やインシデント対応強化を目的として、EDRを導入する企業が増えています。実際に「まずはEDRを導入したい」という相談を受ける機会も少なくありません。
一方で、「EDRを導入したから大丈夫だろう」と考えられているケースも少なくありません。
EDRは重要なセキュリティ対策の一つではあるものの、導入しただけで安全が担保されるわけではありません。設定や運用が適切でなければ期待した効果が得られず、またEDRだけではすべての攻撃を検知することは困難です。
重要なのは製品を導入したことではなく、攻撃を検知し対応できる状態を維持できているかどうかです。
本記事では、「EDRを入れているから安心」という考え方がなぜ危険なのか、そして実務ではどのような視点でセキュリティ対策を評価すべきなのかを解説します。
目次
EDRは侵害を完全に防ぐ仕組みではない
まず理解しておきたいのは、EDRはすべての攻撃を防ぐための仕組みではないということです。
EDR(Endpoint Detection and Response)は、端末上の不審な挙動を検知し、調査・対応を支援するための仕組みです。従来のアンチウイルス製品では捉えにくい攻撃を可視化できることから、多くの企業で導入が進んでいます。
しかし、EDRの役割は「侵害を前提として監視すること」にあります。
主な役割は、攻撃の兆候を検知し、被害範囲を調査し、拡大を抑えることです。侵入そのものを完全に防ぐ仕組みではありません。そのため、「EDRを導入したから侵害されない」ではなく、「侵害された場合でも早期に気付くための対策」として理解することが重要です。
なぜ「EDRを入れたから安心」が危険なのか
EDRは導入しただけでは十分な効果を発揮しません。
実際の現場では、初期設定のまま運用されていたり、アラート通知先が設定されていなかったり、アラートを確認する担当者が決まっていなかったりするケースがあります。また、一部端末が監視対象から漏れていることもあります。
こうした背景には、EDRに対する誤解が存在します。
| 誤解 | 正しい理解 |
|---|---|
| EDRがあれば侵入は防げる | EDRは侵害の兆候を検知し、調査や対応を支援するものであり、侵入そのものを完全に防ぐものではない |
| EDRを導入すれば運用は不要 | 設定確認やアラート対応など継続的な運用が必要 |
| アラートが出ていないから問題ない | 設定不備や監視不足により、本来検知すべき事象を見逃している可能性がある |
| EDRがあるので他の監視は不要 | 認証ログやネットワークログなど、複数の監視手段を組み合わせることが重要 |
| ペネトレーションテストを実施しているので安心 | ペネトレーションテストとEDRの検知・運用評価は目的が異なる |
特に注意したいのが、「アラートが出ていないから問題ない」という考え方です。
アラートが発生していない理由として、本当に異常が発生していないからなのか、それとも設定や監視体制の問題で検知できていないかのどちらもあり得ます。
また、攻撃者がEDRを回避した場合や、EDRだけでは把握しきれない活動が発生した場合は、別の監視手段で異常を検知する必要があります。
EDRだけでは見えない領域がある
EDRを導入すると、「端末を監視しているから他の対策は不要」とされてしまうケースがあります。
しかし実際には、攻撃者の行動すべてをEDRだけで把握できるわけではありません。
例えば、
- ネットワーク機器への攻撃
- 認証サービスに対する攻撃
- 正規の認証情報の悪用
- EDRの回避
- ファームウェア等への攻撃
などは、認証ログやネットワークログなど別の情報源を確認しなければ気付けない場合があります。
また、攻撃者がEDRによる検知を回避した場合、端末上では目立った痕跡が残らないこともあります。
そのため実務では、EDRだけに依存するのではなく、認証・ネットワーク・クラウドなど複数の観点から異常を検知する体制を整備することが重要になります。
求められるのはEDRの有無ではなく、攻撃者の行動をどこで検知できるかという視点です。
実務では多層防御として評価する
実務では「EDRが導入されているか」よりも、「攻撃をどこで検知できるか」を重視します。
そのため、一つの製品だけに依存するのではなく、複数の検知ポイントを組み合わせて防御する多層防御の考え方が重要になります。
例えば、
- EDRによる端末監視
- Active Directoryなどの認証監視
- VPN利用状況の監視
- ネットワーク通信の監視
- SIEMによるログ分析
などを組み合わせることで、一つの対策が回避された場合でも別の場所で異常を発見できる可能性が高まります。
大切なのは対策の数ではなく、それぞれの対策が何を監視し、どの攻撃を検知できるのかを理解した上で組み合わせることです。
実務では、「EDRがあるから大丈夫」ではなく、「攻撃者が侵入した場合にどこで気付けるか」という観点で対策全体を評価します。
ペネトレーションテストだけでは分からないこともある
「毎年ペネトレーションテストを実施しているから安心」と考える企業もあります。
もちろん、ペネトレーションテストは実際の攻撃者視点でシステムを評価する有効な手法です。しかし、多くのペネトレーションテストは侵害後の行動や攻撃経路を評価することを目的としており、EDRの検知性能や運用状況の確認を主目的としているわけではありません。
特にペネトレーションテストでは、侵害された端末を起点として権限昇格や横展開、重要情報への到達可能性などを確認するケースが一般的です。言い換えれば、「既に攻撃者が内部に侵入している状態」を前提として評価を進めることが少なくありません。
一方でEDRは、そのさらに手前の段階で不審な挙動を検知するための仕組みです。攻撃者による実行ファイルの起動や不審なコマンド実行、権限昇格の試みなどを検知し、侵害の兆候を可視化します。
そのため、ペネトレーションテストの結果が良好だったとしても、「EDRが適切に検知できているか」「アラートが適切に通知されるか」「運用担当者が対応できる状態になっているか」が評価されているとは限りません。
ペネトレーションテストとEDR評価はどちらが重要という話ではなく、確認しているポイントが異なります。実務では、攻撃者の侵入経路や被害範囲の評価に加え、検知体制そのものが機能しているかを確認することも重要です。
当社が支援できること
当社には、「EDRを導入しているが、本当に攻撃を検知できるのか分からない」「アラートが出た際に適切に対応できる状態になっているか確認したい」といったご相談が寄せられます。
EDRは導入することが目的ではなく、実際の攻撃を検知し、対応につなげられる状態を維持することが重要です。しかし、その有効性は管理画面を見るだけでは判断できません。
そこで当社では、ペネトレーションテストのオプションとして、疑似マルウェア等を用いたEDR検知状況確認サービスを提供しています。攻撃の実行過程において、EDRがどのような挙動を検知するのか、アラート通知や運用体制に問題がないかを確認することで、対策の実効性を評価することが可能です。
EDRを導入しているものの効果に不安がある場合や、現在の対策が本当に機能しているか確認したい場合は、お気軽にご相談ください。